201 ステンレス鋼:特性と主要な用途
共有
Table Of Content
Table Of Content
201ステンレス鋼はオーステナイト系ステンレス鋼に分類され、高いクロムおよびニッケル含有量で知られています。通常、約16-18%のクロムおよび3-5%のニッケルが含まれ、低炭素含有量(0.15%未満)です。この組成は、その優れた耐腐食性、成形性、溶接性に寄与し、さまざまな用途で人気の選択肢となっています。
総合概要
201ステンレス鋼は、適度な耐腐食性と優れた機械的特性が求められる環境でしばしば利用されます。その独自の組成は、常温および高温の両方で強度と靭性を維持することを可能にします。ニッケルの代わりにマンガン(最大7.5%)が存在することで、その強度が向上し、高ニッケルグレードに比べてコスト効果が高まります。
主要特性:
- 耐腐食性: 酸化および腐食に対して良好な抵抗を提供しますが、304などの高ニッケルグレードに比べると耐性は劣ります。
- 機械的特性: 優れた引張強度と延性を示し、成形および製造に適しています。
- 溶接性: 標準的な技術を使用して溶接可能ですが、有害な粒界腐食を避けるためには注意が必要です。
利点と制限:
| 利点(長所) | 制限(短所) |
|---|---|
| 高ニッケルグレードに対するコスト効果の高い代替品 | 304および316グレードと比較して耐腐食性が低い |
| 良好な成形性と溶接性 | 塩化物環境でのピッティングに対して感受性が高い |
| 高い強度対重量比 | 高温アプリケーションには適していない |
201ステンレス鋼は、自動車、建設、食品加工を含むさまざまな分野で人気を得ており、パフォーマンスとコストのバランスが取れているためです。歴史的に見ても、高級ステンレス鋼の優れた耐腐食性が必要でない用途のためのより手頃な選択肢として機能してきました。
代替名、規格、および同等品
| 規格団体 | 指定/等級 | 発祥国/地域 | 注記/備考 |
|---|---|---|---|
| UNS | S20100 | アメリカ | AISI 301に最も近い等級で、わずかな組成の違いがあります |
| AISI/SAE | 201 | アメリカ | 一般的に使用される指定 |
| ASTM | A240 | アメリカ | ステンレス鋼板の標準仕様 |
| EN | 1.4372 | ヨーロッパ | ヨーロッパ規格の同等物 |
| JIS | SUS201 | 日本 | 日本の標準指定 |
201とその同等品(たとえば301)との違いは、主にニッケルとマンガンの含有量にあり、これが耐腐食性や強度といった特性に影響を与えます。たとえば、301はニッケル含有量が高く、耐腐食性が向上していますが、201は耐腐食性がそれほど重要でない用途にはコスト効果が高いです。
主要特性
化学組成
| 元素(記号および名称) | 百分率範囲(%) |
|---|---|
| Cr(クロム) | 16.0 - 18.0 |
| Ni(ニッケル) | 3.0 - 5.0 |
| Mn(マンガン) | 5.5 - 7.5 |
| C(炭素) | ≤ 0.15 |
| Si(ケイ素) | ≤ 1.0 |
| P(リン) | ≤ 0.045 |
| S(硫黄) | ≤ 0.03 |
201ステンレス鋼におけるクロムの主な役割は耐腐食性を高めることであり、ニッケルは靭性と延性に寄与します。マンガンはオーステナイト構造の安定剤として機能し、ニッケルの依存度を下げ、コストを削減します。
機械的特性
| 特性 | 状態/温度 | 典型的な値/範囲(メトリック - SI単位) | 典型的な値/範囲(インペリアル単位) | テストメソッドの参照標準 |
|---|---|---|---|---|
| 引張強度 | 焼きなまし | 520 - 750 MPa | 75 - 109 ksi | ASTM E8 |
| 降伏強度(0.2%オフセット) | 焼きなまし | 205 - 310 MPa | 30 - 45 ksi | ASTM E8 |
| 伸び | 焼きなまし | 40 - 50% | 40 - 50% | ASTM E8 |
| 硬度(ロックウェルB) | 焼きなまし | 70 - 90 | 70 - 90 | ASTM E18 |
| 衝撃強度(シャルピー) | -20°C | 30 J | 22 ft-lbf | ASTM E23 |
201ステンレス鋼の機械的特性は、適度な強度と延性を必要とするアプリケーションに適しています。その降伏強度と引張強度は構造用途には適しており、伸びは良好な成形性を示し、亀裂なしに成形することができます。
物理的特性
| 特性 | 状態/温度 | 値(メトリック - SI単位) | 値(インペリアル単位) |
|---|---|---|---|
| 密度 | - | 7.93 g/cm³ | 0.286 lb/in³ |
| 融点 | - | 1400 - 1450 °C | 2552 - 2642 °F |
| 熱伝導率 | 20°C | 16.2 W/m·K | 112 BTU·in/(hr·ft²·°F) |
| 比熱容量 | 20°C | 500 J/kg·K | 0.12 BTU/lb·°F |
| 電気抵抗率 | 20°C | 0.73 µΩ·m | 0.73 µΩ·in |
201ステンレス鋼の密度は比較的軽量な材料を示しており、重量が懸念される用途に適しています。その熱伝導率は中程度で、熱放散が必要なアプリケーションに有益であり、比熱容量は、著しい温度変化 없이合理的な量の熱を吸収できることを示唆しています。
耐腐食性
| 腐食性物質 | 濃度(%) | 温度(°C/°F) | 耐性評価 | 注記 |
|---|---|---|---|---|
| 塩化物 | 3-10 | 20-60 / 68-140 | 良好 | ピッティングに感受性あり |
| 酢酸 | 10-20 | 20-60 / 68-140 | 良好 | 中程度の耐性 |
| 硫酸 | 5-10 | 20-60 / 68-140 | 不良 | 推奨されない |
| 大気中 | - | - | 優れた | 良好な耐性 |
201ステンレス鋼は、環境腐食に対して良好な耐性を示し、有機酸に対して中程度の耐性を持っています。ただし、塩化物環境ではピッティング腐食に感受性が高く、海洋や沿岸用途において重要な欠点となる可能性があります。304および316グレードと比較すると、201の耐腐食性は低く、特に塩化物が豊富な環境では、海水や凍結融解塩にさらされる用途には適していません。
耐熱性
| 特性/制限 | 温度(°C) | 温度(°F) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 最大連続使用温度 | 800 °C | 1472 °F | - |
| 最大間欠使用温度 | 870 °C | 1598 °F | - |
| スケーリング温度 | 900 °C | 1652 °F | 酸化のリスク |
高温では、201ステンレス鋼はその強度と靭性を維持しますが、長時間の曝露は酸化を引き起こす可能性があります。800 °Cを超える連続運転を必要とするアプリケーションには推奨されません。なぜなら、スケーリングや機械的特性の低下が起こる可能性があるためです。
加工特性
溶接性
| 溶接プロセス | 推奨フィラー金属(AWS分類) | 典型的なシールドガス/フラックス | 注記 |
|---|---|---|---|
| TIG | ER308L | アルゴン | 適切な技術で良好な結果が得られます |
| MIG | ER308L | アルゴン/CO2ミックス | 厚いセクションには予熱が必要です |
201ステンレス鋼は一般的に標準的な技術を使用して溶接可能と考えられています。ただし、厚いセクションでは亀裂を防ぐために予熱が必要です。溶接後の熱処理は、溶接部の耐腐食性を向上させることができます。
機械加工性
| 加工パラメータ | 201ステンレス鋼 | AISI 1212(ベンチマーク) | 注記/ヒント |
|---|---|---|---|
| 相対的な加工性指数 | 50 | 100 | 中程度の加工性 |
| 典型的な切削速度(旋盤加工) | 30-50 m/min | 80-100 m/min | 最良の結果を得るために炭化物工具を使用 |
201ステンレス鋼の加工は、作業硬化特性のために挑戦的になる可能性があります。最適な結果を得るためには、適切な切削工具および速度の使用が重要です。
成形性
201ステンレス鋼は良好な成形性を示し、冷間および加熱成形プロセスが可能です。亀裂なしに曲げたり形作ったりできますが、過度の作業硬化を避けるためには注意が必要です。
熱処理
| 処理プロセス | 温度範囲(°C/°F) | 典型的な浸漬時間 | 冷却方法 | 主な目的/期待される結果 |
|---|---|---|---|---|
| 焼きなまし | 1050-1150 °C / 1922-2102 °F | 1-2時間 | 空気または水 | 応力を除去し、延性を改善 |
焼きなましのような熱処理プロセスは、201ステンレス鋼の延性と靭性を大幅に改善し、より簡単に成形および溶接できるようにします。
典型的な応用および最終用途
| 産業/部門 | 具体的な用途例 | この用途で活用される鋼の主な特性 | 選定理由(簡潔に) |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 排気システム | 耐腐食性、強度 | コスト効果が高く耐久性がある |
| 建設 | 建築的特徴 | 成形性、美的魅力 | 良好な表面仕上げ |
| 食品加工 | 食品取り扱い機器 | 耐腐食性、衛生 | 清掃とメンテナンスが容易 |
その他の応用には:
* キッチン用品
* 化学処理装置
* HVACコンポーネント
201ステンレス鋼は、コスト、機械的特性、および耐腐食性のバランスが取れており、湿気や化学薬品にさらされる環境での利用に適しています。
重要な考慮事項、選定基準、その他の見解
| 特性/特性 | 201ステンレス鋼 | 304ステンレス鋼 | 316ステンレス鋼 | 簡潔な長所/短所またはトレードオフノート |
|---|---|---|---|---|
| 主要な機械的特性 | 適度な強度 | 高強度 | 高強度 | 304および316はより良い性能を提供 |
| 主要な耐腐食性 | 塩化物に対して良好 | 優れた | 優れた | 201はピッティングに対して耐性が低い |
| 溶接性 | 良好 | 優れた | 良好 | 304および316は溶接が容易 |
| 加工性 | 中程度 | 良好 | 中程度 | 304は加工が容易 |
| 成形性 | 良好 | 優れた | 良好 | 304はより延性がある |
| 相対的なコスト | 低い | 中程度 | 高い | 201はよりコスト効果が高い |
| 典型的な供給状況 | 一般的 | 非常に一般的 | 一般的 | 304は広く利用可能 |
201ステンレス鋼を選択する際は、コスト効果、供給の可用性、および直面する環境条件が考慮されるべきです。多くの用途にとって特性の良好なバランスを提供しますが、耐腐食性の制限は意図された用途の要件と照らし合わせて慎重に評価する必要があります。さらに、その磁気特性は、非磁性材料が好まれる特定の用途に適しています。
要約すると、201ステンレス鋼は多用途でコスト効果の高い材料であり、さまざまな産業で利用が見られます。その独自の特性は幅広い用途に適していますが、限界を慎重に考慮することが最適な性能に不可欠です。